通 史 昭和26年(1951) 日薬−県薬−市薬

 昭和26年(1951)

画像
 1.24 診療報酬調査会

 約6ヶ月13回に亘って行われた会合の結果、答申案が決定した。

画像
 2.5〜7 第4回医薬制度調査会

 厚生省討議項目提出

 1.医薬分業の原則を認むべきか
 2.認めるとせば任意分業とすべきか、強制分業とすべきか
 3.任意分業とする場合、実施を確保する方法
  @処方せん交付の問題
  A国民に対する教育の問題
 4.強制分業とする場合
  @実施の時期
  A実施の地域
  Bその他実施上考慮すべき条件

 3日間討論したが結論出ず、三志会懇談の場に移されることになったが、これも失敗に終わる。

画像
 2.28 第6回医薬制度調査会

 8回の小委員会、6回の調査会を通じ医師側は強制分業に終始反対で今回決選投票を行った結果、19対11で強制分業法案が可決された。医師会では「調査会でどう結論が出ても、国会で必ず握りつぶす」との電報が地方医師会に発せられた。

 <強制分業答申>

 施行については前提として医療報酬に関し、昭和26年1月24日付臨時診療報酬調査会答申に基づく所要の措置がとられることが必要であるので、昭和28年からとすべきである。

 1.医師法第22条の改正(歯科医師法も同様改正)
  医師は診療上投薬を必要と認める場合には、患者に対し処方せんを交付しなければならない。

 2.薬事法の改正
  薬剤師は調剤する場合には、医師、歯科医師または獣医師の処方せんによらなければならない。

 3.薬事法第22条の改正(昭和33年から施行すること)
  薬剤師でない者は、販売または授与の目的で調剤してはならない。

  前項の規定にかかわらず、医師、歯科医師、獣医師は次に挙げる場合において自己の処方せんにより
  自ら調剤することができる。
 (1)審議機関の審議を経て厚生省令で定めるところにより、診療上必要と認められる場合
 (2)審議機関の審議を経て厚生省令で定めるところにより、薬局の分布が充分でない地域で行う場合

 3.1 第6改正日本薬局方公布

画像
 3.20 医薬分業期成九州薬剤師大会開催(福岡市消防会館 出席者400名)

 「我らは医薬分業制度の確立を妨害せんとするあらゆる勢力を国民の敵として排除せんことを期する」と決議

 3.25 全国薬剤師大会開催(東京神田共立講堂 出席者2.500名)

画像
 3.28 分業法案国会審議

 衆参両厚生委員会で同時審査となり、法案の早急な成立を目的として衆院では事前審査(3/28〜30終了)のみで、この後地方選挙のため自然休会となり、5月の再会国会の参院厚生委員で審議されることになった。

画像
 1.9 福岡県薬剤師協会支部長会(武田薬工福岡支店 13時)

 礒田会長挨拶

 「臨時診療報酬並びに医薬制度両調査会も医師側のたゆまざる遷延策により結論を出すことなく、やむなく越年するに至ったが、また考え方によっては調査会の核心を把握している中立委員に、分業の真意を充分に知らしむることを得たことは、今後の委員会の動向が薬剤師側に有利に展開されるとも見られる。現在の客観情勢よりみて、分業関係法案が国会に提出されるのは3月上旬の見込みであり、その審議はおそらく5月に入るものとの見方が有力の様である。いずれにせよ、今年は吾等にとって分業の年であり、支部長各位の一段の尽力を希望してやまない」

 1.21 蘇陵会開催(東中洲 筑後屋 15時 会員200余名中50名出席)

 ほとんど中絶状態にあった熊本薬専卒福岡在住者の会が数年ぶりに行われた。今後同会を継続させるため会則を定め役員を決定した。
  会 長 荒巻 実
  副会長 内田三郎、友納英一

画像
 3.5 第4回福岡市薬剤師協会定時総会(新天会館 13時 出席者64名)

 来賓 :松村九大薬局長、屋形薬務課長、尾崎技師、安田麻薬取締主任、中島保健所技師
 斉田理事の開会のあいさつ、末岡会長の演術につぎ白木県常務理事から分業についての詳細な経過報告が行われた。次に屋形薬無課長より新毒物、劇物取締法についての説明が行われた。

 議案

 1.昭和25年度事業報告並びに決算報告
 2.昭和26年度事業計画ならびに予算案について
 3.第3次分業運動資金集収について
 4.役員改選の件
  役員改選については、かねてから会員に問題視されていたが、5名の選考委員により協議された結果、会長に礒田秀雄氏(県薬協会長)が選ばれ、理事は礒田氏に一任された。

画像
 4.1 礒田会長、檄をとばす

 「若き薬剤師諸君よ奮起せよ」

 分業法案が3月20日の閣議を通過した。今後は両院の厚生委員をしらみつぶしに説得するしか手はない。日刊紙の報道によれば、医師会の勢力により反対論が圧倒的で、審議未了、即ち握りつぶしは免れないとある。そうなれば永久に望みはない。それにしても、薬剤師の技術講習会を開催しても、若い諸君の顔が余りに少ない。また、分業達成の薬剤師大会が開かれても出席が見受けられない。若き薬剤師諸君こそ、春秋に富むだけに努力しなければならないのに、一体何を考え、何を夢に描いているのであろうか。
 薬剤師の運命はここ2ヵ月のうちに一切が決定される。今からでも遅くない。若い薬剤師諸君がこの危局に思いをいたし奮起一番せられんことを望む。老薬剤師すら死を賭して分業案の通過に努めているとき、多くの若い薬剤師諸君が深い眠りを続けていることは、余りに無気力過ぎはしないか。

画像
 5.7 参院厚生委員会開催

 山下厚生委員長談話

 「会期中に審議を終了するよう努力はするが、薬剤師と医師との熱意には相当開きがあり、医系に比して薬剤師は熱意が低い。地方医界からの盛り上がってくる反対の力はまことに強いものがある。政治力の面から見ても、政治訓練の行き届いた医師に比べて薬剤師は比較にならぬほど弱い」

画像
 5.8 参院医薬分業公聴会を開催

 4月10日の理事会で、一般大衆から広く口述人を募集して公聴会を開催する事が決定し発表されていたが、これに対する口述人の申し込みは132人に達し、賛成者47人、反対者85であった。
 この中から賛成、反対各6名を選び公聴会を実施した。

画像
 参院厚生委員会証人喚問

 1、両調査会関係(5月11日)

 証人 診療報酬調査会、医薬制度調査会の各代表

 「委員質問」

 (1)医師の調剤を法律で禁止する根本理由はどこにあるか、又医師には調剤能力がないのか。
 (2)医師の調剤禁止は憲法違反ではないか。
 (3)分業実施後、医歯薬三者の協調が期待できるか。
 (4)分業が国民に与える利害をどう思うか。

 「証人答弁」

 (1)分業は原則的には賛成であるが総医療費の上下がはっきりしない点は不満である。
 (2)薬剤師の制度がある以上分担するのは当然であるが、まず医師の技術料を決定してから(決定済)自然に分業に向うのが理想的。
 (3)医師は薬剤師ほど医薬品の製造、性状、監識等について詳しくないが、日常の調剤はできる。
 (4)医師の調剤権禁止については現在でも薬剤師が調剤を行うこととなっている。ただ法律制定当時の特殊事情で例外的に医師の調剤が認められているのであって、原則にもどって禁止することは憲法上の問題ではない。
 (5)今後医師会との妥協は困難であり、医歯薬の協調は見込み薄であろう。
 (6)医療費の増減については、分業実施の範囲、及びその程度が決まらなかったので不明である。
 (7)進歩とともに専門化されるのは当然で、分業が医療の向上につながるのは事実だ。

 2、三師会関係(5月15日)

 日医 武見前副会長

 「わずか3年前GHQの承認の下に国会を通過した現行任意分業が、この間何ら客観的情勢の変化がないのに、どうして法律による強制分業を今日行わなければならないか、その理由の発見に苦しむ」

 日薬 高野理事長

 「各層の分業論は、賛成の基調の下にその方法論が論議されている。最も関心の的である医療費の問題は、分業の結果上がるか下がるかではなく、上げるか下げるかの問題である。今の国民の医療費負担は最大限に達しているので、現在より上げないことを条件として調査会では答申している。

 又医師が言う強制という言葉は誤解を招きやすい。例えば右側通行も法律で決められたから強制右側通行というか、農地改革も強制農地改革というか、当然あるべき姿の法制化を求めているのである」

 日歯 佐藤会長

 「分業は既に薬律の制定された時に決まっている。現制度は受療者の一習慣であり、薬を薬剤師から貰うことは当然である。しかし医薬の分離は、医師の経済問題が解決しなければとうていできないため、まず医療の新体制を期間を決めて強制化し、納得がいった時実施する。この二つが是非必要である」

 日薬 横井理事

 「処方公開は医療を向上させ医薬協力すれば薬価も高くならない。現在薬剤師は自らの職能で奉仕ができない。昨年法律による薬局改修に数万〜数十万円を投じて完成した薬局も現在ではなんら用をなさない」

 日医 榊原前副会長

 「医師には調剤能力がある。処方を公開しても国民の衛生知識が向上するとは限らない。むしろ弊害を生じるおそれが大である。分業によって医師の調剤が省け医術が向上するという如きは、不器用な他国民のことであって日本人には適用しない。分業を実施すれば必ず医療費は増大する。ただ新医療体系で、医師が投薬することによって少しももうからない状態になれば自然に分業になる」

 松原委員 榊原証人に詰め寄る

 「医系は薬系や政府を責めることは厳しいが、医師自身に調剤することはなく、看護婦などに任せている点、自己反省が乏しいとは思わないか」

 3、医・薬大関係(5月16日)

 医系 児玉(東大)、田中(岡山)、黒川(東北)、黒津(阪大)、戸田(九大)医学部長

 (1)医大における医薬関係教育中には薬理学、処方学があるが、これは全教育の4%に当たる。医師にも調剤能力はある。
 (2)医師の国家試験に調剤学があるかとのことであるが、大体調剤技術は国家試験を必要とするほどのものではない。
 (3)分業には賛成であるが、医師から調剤権を強制的に奪うことには賛成できない。

 薬系 村山東京薬大学長

 (1)新制薬大も従来通り、旧制と同様薬学教育は調剤に重点が置かれている。なお医学領域である薬理学、生理解剖学、細菌学、免疫学等も同時に教課されている。
 (2)調剤を完全にやるために医薬品の製造、合成、分析等の学課が課せられているが、もちろん調剤学は国家試験で学説、実地を通過しなければならない。医師の調剤知識程度では不十分である。
 (3)医師が素人よりも調剤知識があるという理由で、国民の便利のため調剤すべきであるというならば、薬剤師が素人よりも医学の知識があるという理由で、国民の便利のため対症投薬を行ってもよいではないかとも言える。

画像
 昭和26年5月21日サムス准将辞任 (帰国5月25日)

 突然のことで薬剤師会は愕然とし悲惨な思いに沈んだ。

 なお、サムス准将辞任の理由についてはどの歴史書にも書かれていない。分業攻防史を参考にして頂きたい。この原稿は平成26年7月15日に加筆訂正したものである。(藤原)

画像
 [任意医薬分業法成立(6月5日)]

 分業法案は難航しており審議未了となる公算が強かったが、会期を延長し政府案を修正して成立した。ここに強制分離案は一蹴され全くの骨抜き法となったわけである。

◆[修正点]

 (1)医師、歯科医師は省令で規定された特別の理由ある場合は調剤ができる。
 (2)患者、又はその看護人が特に調剤を希望するときは、医師、歯科医師で調剤できる。
 (3)実施期日を3年短縮する(昭和30年1月1日から実施)。

画像
 福岡市薬剤師協会機構決定 26年4月11日 県薬協事務所

 3月5日の定時総会で理事選任を礒田会長に一任された結果、福岡市選出県薬協理事者会を開き次のように決定。

 1、市部を13学校区に、郡部を1区、計14区に分け各区に部会を設け、部長1名を置く。
 2、理事10名を置きそのうち5名は県薬協理事の兼任とする。
 [理事] 荒巻 実、野入益穂、宮原軍平、小金丸三郎、古川周一
 [県薬兼任理事]須原勇助、武田準一、白木太四郎、倉光正治、小松真佐雄

 「峰松今朝一氏 逝去

 26年04月29日 享年71歳
 同氏は佐賀県の産、福岡薬業界の元老であった。開局40年、新天町に卸部、東中州に小売部を経営、昭和15年県薬剤師会会長」

 地方選挙 福岡市議選 26年4月

 内田三郎氏、榊 直威氏落選

画像
 昭和26年5月15日〜17日医薬分業 街頭署名運動

 全国一斉に展開されたが福岡市では、東中洲、天神、渡辺通1丁目、博多駅前の4カ所で3日間朝9時より午後7時までスピーカーにビラにと宣伝、署名活動を行った。

 分業達成国民大会

 昭和26年5月16日 東京神田共立講堂
 出席者 3,000名

 一大デモ行進  昭和26年5月21日 東京 薬剤師 5,000名

画像
 第4回福岡県薬剤師協会代議員会

 昭和26年6月27日 福岡商工会議所
 副会長補欠選挙で波多江嘉一郎氏選出
 事業計画の主なものは、分業法案の成立によりその受け入れ態制についてのもの

 総会に移り高野理事長講演
 2時間に亘り分業問題の経過説明

 第1回福岡薬学集談会 7月18日 東中洲消防会館 午後1時 出席80名

 1、日本薬学会出席報告  松村 九大薬局長
 2、界面科学より見た薬学  西海枝 九大教授
 3、薬剤師須知の保健業務について  中島 福岡保健所技師
 4、薬剤師道  安河内 九薬報主幹

画像
 福岡市薬剤師協会臨時総会 7月18日 午後4時 消防会館

 礒田会長他役員辞任による選挙

 意見続出のため14名の全部会長を選考委員として選考した結果、会長に鶴原正蔵氏選出
 理事は会長一任

画像
 福岡市薬剤師協会勤務部会結成 8月31日 午後2時 武田薬工福岡支店 出席40余名

 部会長 山本秀一(国立福岡病院)
 幹事  福井正樹(済生会病院)
     中島政雄(聖福病院)
     鹿川 亘(九大薬局)
     結城一夫(逓信病院)
 顧問  松村九大薬局長、尾形県薬務課長

画像
 福岡市薬剤師協会 三部会制となる(初期支部制)

 東部会 博多、箱崎及び周辺地区
  支部長 斉田一夫
  理事  荒巻、柴田、樋口
 西部会 福岡、早良、糸島及び周辺地区
  支部長 倉光正治
  理事  富永、猪山、戸田、小金丸、古川
 勤務部会
  部会長 山本秀一

 鶴原会長は選任されてから、市薬協の今後のあり方について構想を練っていたが、従来単に県薬協に隷属の一支部としての状態にあきたらず、大福岡市にふさわしい組織を目指したものである。

 福岡市薬剤師協会 工場見学実施 9月5日 参加者70余名

 戸畑明糖、日糖、日本製粉、日本ビール

 覚せい剤取締法 6月30日公布 7月30日実施

画像
 全国学校薬剤師大会開催 10月7日 九大医学部中央講堂

 ◆日本学校薬剤師会結成

 会長 日薬刈米会長

 第1回全国学校保健大会が10月6〜8日行われその分科会として約150名が出席して行われた。礒田県薬協会長が議長となり協議された。

 第21回九州薬学会総会並びに第2回九州薬剤師協会大会

 10月27日〜29日 長崎市カトリックセンター

画像
 薬と健康の週間(福岡県) 9月24日〜30日

 宣伝放送車を出す
 医薬分業のポスターを各薬局に掲示
 奉仕事業
 水質、血液、便の検査(各支部で実施できるもの)

 福岡市薬剤師協会勤務部会10月例会 10月6日 午後2時 山之内製薬 出席約30名

 研究発表 九大薬局 木村浩三氏
 親水性ローション基剤と各種薬物との配合について

 福岡市薬剤師協会勤務部会工場見学

 10月13日 日本化成黒崎工場 参加者46名
 ペニシリンの製造工程他

 福岡市薬業界親睦野球大会 10月21日(日) 修猷館運動場

 新薬会(メーカー)5:3 市薬協開局部会
 問 屋 11:3 市薬協勤務部会
 開局部会 8:0 勤務部会
 メーカー 8:5 問屋
 メーカー優勝

 益進クラブ総会並びに江口前薬局追悼会

 11月11日 午前10時 萬行寺 江口 作先生追悼会
 午後1時半 恵比須堂 総会

 福岡薬界の明星 荒巻薬局のおめでた

 薬局主荒巻政次郎氏嗣子善之助氏は熊本薬専出身の秀才、卒業と共に九大薬局に学び、今春より同薬学科西海枝教室に転じて薬学に精進、新しき分野が同氏の明るい将来に嘱望されているが、今般良い縁あり医師林 正孝氏二女大阪女子薬専出身の才媛キク子嬢と11月9日めでたく華燭の式典を挙げられた。両氏手を携えて薬学薬業のため同臭の道に幸あらんことを祈る
 九州薬事新報 11月20日号 」

 福岡市薬剤師協会勤務部会11月例会

 11月24日 午後2時 武田薬工福岡支店 出席40余名
 「研究発表」
 @病院薬局における各種統計 済生会病院 仙頭一郎
 A塩酸キニーネとアスピリンの配合について 九大薬局 木寺よし子

 第2回福岡市薬剤師協会集談会

 12月5日 午後1時 九大薬学科講堂 出席180名
 @検便と腸内寄生虫 開局 内田数彦氏
 A薬局経営について 開局 四島 久氏
 Bその他4名

 福岡市薬剤師協会勤務部会12月例会 12月15日 午後2時 恵比須堂

 第一製薬 診断用試薬説明 大野学術課長