通 史 昭和25年(1950) 日薬−県薬−市薬
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昭和25年(1950) 1.9 三志会(三師会)開催 医薬分業の早期実施を目指すサムス准将の後押しがあって実現したものであり、この後、日薬は多大の期待をよせることになる。また、薬剤師会活動は全国的に分業一色となる。 当日のサムス准将(総司令部公衆衛生福祉部長)挨拶 「それぞれ異なった専門分野にある医師、歯科医師、薬剤師は、各々その専門による学問と知識と経験において、一般公衆の尊敬を得、かつ収入を計るべきである。日本において、この根本問題(薬事勧告による医薬分業)が解決しない事には、自分が今日まで努力してきた開拓事業が全く無意味となる。この根本的問題の解決は、5年先、3年先、1年先に延ばすべき性質のものではない。問題解決は、かかって本日会合の三団体にあるので、速やかに無理なき改正案をまとめるべきである」 1.11 全国医師会長会開催 分業問題を討議。結論は分業反対で、阻止の目的で政治力を強化することにした。 1.13 サムス准将による三志会への通達 「分業問題に対し、3週間以内に態度決定せよ」 1.23 第2回三志会 1.26 第3回三志会 1.28 第4回三師会 医師会は法律をもって、医師の調剤権を禁止するのは反対であるとして、結論が出なかった。 1.31 慶松薬務局長の国会答弁に高野日薬専務理事怒る 「薬事法改正を今国会で計画しているか」に対し、局長は「薬事法改正の噂は誤報である」。「勧告を至上命令と考えるか」に対し「勧告は2種ある。1つは使節団の勧告で分業が説明されている。他の1つは三志会でサムス准将の示唆であるが、これは結論を早急に出せということではなく、早速分業問題に着手せよとの意味に解している」と答弁した。 これに対し高野日薬専務理事は記者会見で「薬事法改正の噂は誤報であるとは、全く言語道断な言辞である。サムス准将の示唆・・・と答弁した如きは、薬務当事者として(今日迄の経過を詳細に知っていながら)無責任も甚だしい」と憤慨した。 2.6 日薬勧告書対策委員会、分業実施後の治療費は16%軽減すると発表 2.14 大阪府医師大会分業反対で気炎 日医代議員会議長(九州)出席、会員200余名 2.14 日薬、日医、サムス准将と個別会談し経過報告 2.15 日薬、衆参量院議長へ分業請願書提出 2.21 サムス准将、林厚相を呼び会談 日本医師会 医薬分業対策委員会設置 2.27 日本医師会臨時代議員会 「任意分業には賛成であり、医薬品の販売による生活は改善すべきであるも、法律による強制分業には絶対反対である」と決議し、サムス准将に上申し、会議は2時間に及んだ。 サムス准将、日医代表に対する説示 医師は自らの知識と技術によって医療の向上を希望しているが、このためには研究と勉学の時間を持たなければならない。医薬分業はその目的に対して、最良の方法であると信じている。医師側は医薬分業問題についてその真意を把握せず、いたずらに事を紛糾させている様に見受けられる。 また、医師のある者は、調剤の意義を全く知らない。分業になれば、綿棒に薬液をつけることさえできなくなると思っているのではないか。まことに笑止の沙汰である。薬局に症状を訴えて薬を求める者があれば、これを医師に廻すことは、薬剤師として当然の務めである。医師本来の仕事が治療とその処置にあることは、これまた当然であって、薬を売って生計をたてるなどは邪道である。診断、処置に適当な診察料、処置料を設定すればそれでよいのである。 米国では、医師の収入は普通労働者の5倍であるが、日本では診断と処置料のみで7.5倍となる。米国よりはるかに良率である。三志会において、医、歯、薬の専門分野を明確にすることは、すでに決定したが、その具体的方法がまだ結論を得ていない。しかし、法律的にはこれを行う事は至極簡単である。本日の代議員会では、法的分業に反対している様だが、来月の代議員会では、諸君の賛成の声を聞きたい。医師は一層、治療知識の向上に努力されんことを望む。 3.1 日薬幹部(会長、副会長、専務)サムス准将訪問 サムス准将はに日医に対し、3月開催の定時代議員会において分業賛成の態度を決定し報告する様重ねて指示、また、賛成しない場合は別個の方法を考慮している。そして、薬事法改正案の第7国会提出が時間的に間に合わない時は、参院選後の臨時国会に提出すべきであるとの意向を表明。 3.10 サムス准将、衆参両院医系議員を招き懇談日医は分業問題に対し徹底的反対であるが、客観姿勢としては不利になりつつあり、その場合医系議員による審議未了に持ち込みたいと考えられることから、サムス准将が先手を打ったものである。 3.20 日薬大衆運動小委員会設置 運動方針案 1.医療を明るくする会ともいうべきものを設けて大衆に呼びかける 3.27 サムス准将、再び日医代表を招く 日医代表を呼び分業問題に対する態度を決定するよう指示 3.30〜31 日医定時代議員会開催 第1日 役員改選に終始、従来の役員は総退陣し、分業反対の強固派によって固められた。なお、武見太郎氏は三志会以来偏狭な議論をもっての分業反対論者であるが、圧倒的な指示を得た。日医の意志表現と見られる。 会長 田宮猛雄 副会長 榊原 亨、武見太郎 第2日 分業問題で終日を費やし、「米国と事情を異にする日本では、分業を強制する必要はない。強圧を受ける位なら、会長始め役員、代議員は辞表を懐にして対処せよ」また「調剤権確保のため、実費投薬を即時断行すべし」とか「強制分業が実施されても、これに対処できるだけの対策案を日医幹部において研究すべし」など強固な意見が続出し、ついに分業反対の4項目の決議を行った。 1.投薬は治療行為であり、治療は医師の全責任である。 日医決議に対する厚生省見解 「大衆のため治療行為を完遂するには、その一部門である調剤行為を従来の医師たる非専門家の手から分離の上、専門家である薬剤師の手に移すことが最も必要であり当然のことである」(厚生省は消極的態度から積極的態度へ変換) 4.3 日医、サムス准将へ決議書提出 サムス准将、前回同様の見解示す 4.4 サムス准将、林厚相を呼び具体的指示 これにより厚相は、早急に医療に関する技術料、処置料を合理化し、また適正化するための審議会を設置することになった。 4.8 毎日新聞医薬分業座談会実施 日医 武見副会長、日薬 高野専務理事、厚生省 宮崎事務次官代理、2時間に渡り具体的問題が大衆に明らかにされた。 NHK夜のニュースで座談会の解説 熊谷解説委員より医師会、薬剤師会の考えを対照して伝え、結論としては医薬分業によって、従来の医療の秘密性が患者または第三者に明らかにされ、意義のあることであると述べた。 4.10 学校薬剤師の進出 第2回学校衛生学会(東京日赤講堂) 東京よりプールの水質検査発表、地方より30余名の学校薬剤師が参加 5.15〜16 第3回日薬代議委員会 会長 刈米達雄 副会長 伊藤 薫、武田幸三郎 理事長 高野一夫 常務理事 平塚善太郎 (理事に磯田秀雄氏) 重要事業計画 1.薬事法改正運動 薬と健康の週間実施要綱決定 厚生省では、薬事法施行2周年を記念して、国民大衆の実生活と薬品との関連の重要性認識させるため、厚生省と各都道府県が主催となり、全国的に薬事週間を行うことにした。 九州薬事新報 論調 武見副会長を中心とする日医の新役員は、総司令部の意思表示、或いは交渉経過等を会員に対して率直に報告せざるのみならず、欺まん的中間解決を加えて発表し、そのために会員は正しい事情をも知らない模様である。また、医師会事務局や厚生省の係官に対しても医師の不利益となる場合は、ボス的、政治的暴力をもってその地位をおびやかしている。 6.5 分業問題放送討論会(日比谷公会堂 NHK)〜混乱とヤジ罵声 講師 日医 武見太郎、日薬 高野一夫、第三者 読売新聞編集局次長 高木健夫
当日は午後5時開場というのに、早や午前10時には医、薬の学生50余名が集まり、正午過ぎには延々たる列となった。5時開場とともになだれ入った3000余名の超満員の入場者には負傷者を出す騒ぎであった。開場当初から緊迫した雰囲気であったが、討論は例により武見氏の任意分業、高野氏は強制分業を主張して譲らず、聴衆の質問は乱れ飛んだとはいえ、核心をつくものはなく、第三者の高木氏は結局分業賛成であったが、ヤジ、罵声には毒気に当てられた顔であった。 この醜態に導いた責任は、武見氏の非常識な放言、即ち「調剤は看護婦や女中で結構である」また、薬剤師の道徳は低級であるというが如きの暴論にあった(6.20号)。 ともかく時代はすでに分業を要求している。 6.21 西日本新聞「どうなる医薬分業問題」 厚生省では、ついに最終的勧告(医師会に対して)を決意し、場合によっては医師会を相手にせずとも分業問題を強行する決意を固めたもようである。 6.24 夕刊フクニチ「医薬分業70年の論争に終止符」 この際医師会をボイコットしても早急に協議会を設置し、懸案の医薬分業法案を遅くとも来る通常国会に提出し、70年間の闘争をくり返してきた問題を一挙に解決する決意を固めている。 7.10 厚生省、サムス准将の公開状発表 「日医代表との会談または多くの交渉において、その代表は不正と不真実を繰り返し、会員に真実を伝えないことは、幹部少数者の独裁に日医がゆだねられたことを示すもので、現日医幹部は信頼できない」 <上記に対する添付書状> 「厚生省作成による臨時診察報酬協議会案に対する日本医師会の修正意見に関し、小生と日本医師会並びに日本歯科医師会代表との会談につき、貴省渉外課長よりの文書およびその他各方面よりの報告に接してきた。この会見に関しては、日本医師会役員がその会員に報告せるところは、事実と全く相違するものである。日本医師会の如き民主的専門団体がかかる少数者の独裁に委ねられ、会員に事実をおおい隠し、前述の会合を正確に伝えざるのみならず、その他すべての交渉において、不誠意と不真実とを繰り返しつつあることはまことに遺憾である。小生は、医師会役員になんらの信頼をも持つ能わざるにいたった。故に、ここに貴下に公開文を送り、貴下が日本の全医家のみならず、日本国民のための医業を向上せしむるという基本的問題に関心を有する人々に対しても広く事実を知らしむるために、これを役立たしめるよう要請することの必要を感じるものである」 ★★ 特儒景気おこる 7.11 毎日新聞「医薬分業問題重大化す」 元来医師団体は医薬分業に対しては、過去60年間絶対反対の方策を取ってきたため、困難な政治問題となっているばかりでなく、医師の政治的勢力が強力なため、歴代の内閣もこの問題に対しては。不触主義を一貫して来ているのである。 しかるに昨年、米国薬学使節団の勧告によって総司令部においても、世界唯一の非分業国である日本の医療界にメスを入れ、いよいよ公衆衛生福祉部長 サムス准将がその衝に当り、三志会を指導し厚生省に示唆を与え、これがため厚生省もやむなく起ち上がり、本格的に分業問題と取り組むこととなったのであるが、日本医師会では60年来の堅塁を犯された形で客観情勢が最も不利な立場となったので、講話会議までこの問題を引延し、外部圧力の弱化時に於いて分業問題を一気に医界の政治力によって押し切らんとする、いわゆる「日医の大方針」を建てたものと見られている。 従って、日医が関係筋に対し、また厚生当局に対しその目的完遂のため、あらゆる方法をひそかに講じているので、そこに種々の不誠意と無理が生じ、ついにサムス准将の公開状問題と発展したわけである。ことに、日医を事実上代表している武見副会長の非常識な言論、醜悪なる自己宣伝は関係筋、厚生当局、また一般関係界のひんしゅくを招いている事実が、ようやく日医会員にも問題となりつつある模様であるが、この時に当りサムス准将の公開状が厚生当局の手によって発表されるに至ったのである。 7.26 臨時診療報酬調査会、臨時医薬制度調査会設置 「調査会設置についての高野理事長談話」 両調査会の誕生については、まことに難産であったが、医師会も多少ときの動きに目覚め、ともかく三志会の意見の一致を見た事はもことに喜ばしい事である。この調査会は、実質的に分業実施を目標に医療費問題、法律改正問題を審議するので、その結果により厚生省案が作成され国会に提出されるという事になる。同省では、年末の通常国会をめざしているように思われる。この際、この調査会に特に要望する事は秘密会を排し、公開として衆人監視の中で討議する事である。従前の三志会が秘密会としたため、種々の誤解を生じた事を思い起こすべきだ。 8.7 両調査会開催時におけるサムス准将挨拶(サムス准将の医薬分業に対する基本的な考え方がよく現れている) 医薬分業問題は独り日本に限ったものではなく、他の全文化国家においては既に実施されている事柄である。これは医学、歯学、薬学の三分野において、各自が進歩発達した結果現れたものである。 例えば、米国に於いては1916年に分業が実施されている。日本に於いて未だにこの問題が未解決であるという事は、医、歯、薬三分野の学術が他国に比していかに遅れているかを示している。 近時日本を来訪した医療関係者、または私自身が終戦直後強く感じた事は、医師が薬を売り、歯科医師が金を売り、薬剤師並びに医師が自ら取り扱う薬品の品質について、何ら考慮を払っていないという事であった。 その後米国の医学、薬学の使節団も指摘した様に、医、歯、薬者の受ける報酬の大半が自己の専門技術によるものではないという事実である。これは開業した医師、歯科医師および開局した薬剤師が専門人というよりも、むしろ小企業者であると考えられる所以である。 これは他の近代文化国家と比較し、日本の医療界の不透明を明確に示すものというべきである。元来、専門人ともいうべき者は、第一に自己の専門知識並びに有すること、第二に、自己の専門知識や体験を絶えず進歩増進させることに努力すること、第三に国民大衆への奉仕を常に念頭におくべきこと、第四に専門人としての規格基準に適合すべきこと、第五にその受けるべき報酬は自己の専門技術に対するものであるべきである。 昨年、米国薬剤師協会使節団も「医師は自己の専門職たる診断と治療に、薬剤師は調剤と医薬品保管に専心すべきである」と勧告し、しかもこの勧告の主旨は、米国医師会の支持を得たものである。 この問題は、医歯薬三団体代表による三志会で解決される事と期待していたが、数次の会合でもついに解決点にたっしなかったことはまことに遺憾に耐えない。そこで日本政府は、即ち厚生省で分業問題の適切なる解決を得るために、臨時の両調査会が設置されることとなった。 この調査会は、三志会、政府、医療を受ける側の人々によって構成されているが、問題解決の協議に当たって、特に次の三点に留意されなければならない。第一に医師が薬を売ることによって収入を得ているという現実を検討し、医療費、薬価を適当に改定すること。第二に、歯科医師についても同様に改定すること。第三に薬事専門家が最低の価格で薬品が大衆に与えられる様、その報酬を考慮することである。 次に、国民全体に及ぼす影響であるが、予備的調査によると実質的医療費の増加は1〜2%であると見られている。 次になすべきは、大衆に対する啓蒙でこれに関連する法律の条文を検討し、分業の目的にそう様改正すべきである。本調査会の勧告による改正の最終決定がなされたならば、実施迄には一定の期間を置き、また地域的にも充分検討し日本の実情に合う様考慮すべきである。 尚、本調査会の協議については、本問題が既に相当の日時を経過しているし、資料は直ぐに提出できるはずだから、諸君の勧告はここ2〜3ヶ月でなされることを期待するものである。 8.16 日本医師会臨時代議員会 サムス准将の公開状に対し引責辞任した正副会長並びに常任理事の選挙が行われた。 8.27 西日本新聞 医薬分業問題紙上討論 応募総数 187通(医師 33名、薬剤師 29名含む) 分業賛成 91名 分業反対 96名 反対意見:薬局に走る時間、ことに全国7割の無薬局町村では一層不便になる。また、診察料と薬代の二重になるから、経済的に負担が重くなる。 9.30 薬価基準設定(9月1日にさかのぼり実施) 10.13 衆院厚生委分業論聴取 <第三者代表意見要旨> ・健保連合会 : 上山専務理事、山本理事 ・国保連合会 : 江口専務理事、寺島理事 ・日本オリンピック協会 : 坂入常務理事 ・弁護士(日薬顧問) : 中本氏 ・神奈川県金目村村長 : 柳川氏 ・北大教授 : 中谷氏 ・弁護士(医師会顧問) : 山崎氏 10.21 第1回全国学校薬剤師大会(名古屋市薬業会館) 第4回全国学校衛生大会(10月22〜24日)の薬剤師部会として開催されたもので、学校薬剤師法制化の決議を行った。尚、昭和14年4月名古屋で開かれた第1回全国学校薬剤師協議会以来、毎回法制化についての決議を行っている。 12.1 厚生省覚醒剤の製造中止勧告 12.28 毒物および劇物取締法公布 1.19 福岡県薬剤師協会支部長会 1.中央情勢急なため九州薬剤師大会延期 2.10 九州薬事新報の論調 第4回三志会において、医師会の提出案は「民主的な現行任意分業の遂行には積極的に協力するも、法律をもって医師の調剤を禁止せんとすることには賛成できない」とある。何と表面立派な表現であろうか。なるほど、現行制度においては、患者が進んで医師に処方せんの交付を要求して、その処方せんにより薬局で調剤してもらうことは、できる事となっているが、実際問題として、患者の何パーセントがなし得るであろうか。 心理的に弱い立場にある患者、封建的医療に馴れきっている日本民衆に、民主的という文字にかくれ、現実として殆ど不可能を容易に可能であるかの如き字句は、まことに悪口で言いそうなことである。いかに秘密療法と特権階級維持に焦慮しているにかられているかが、うかがい知らされるのである。薬剤師側の謙虚な態度に対し、医師側の心的態度は実に傲岸そのものであり、俗悪政治家そのもの姿であるといいたくなる。 2.22 福岡県薬剤師協会支部長会開催 礒田会長、中央情勢を報告し、運動活動費を早急に集収して欲しいと支部長に要望した。 3.3 九州新薬会 乱売防止対策委員会を設置し業界に自粛要望 3.16 福岡県薬剤師協会支部長会 1.須原理事、原田日薬代議員、中央情勢報告 2.九大 松村薬局長より 3.25 福岡市医師、薬剤師会合(15時 山之内製薬会議室) 夕刊フクニチ主催で分業問題の座談会実施 : 市医師会、市薬剤師会役員出席 4.1 ☆☆ 明珠 ☆☆ あの温厚な日薬刈米会長を先頭に、幹部連はメーカー方面に対して運動資金の懇請に大わらわであるらしい。 メーカー連曰く、協会充実のためならいざ知らず、分業運動資金とあっては、医師を徒らに刺激するばかりだと。 メーカーの言葉としては決して非常識ではない。しかし、日薬幹部にこの赤恥をかかすものは、薬剤師自身ではないか。 かって刈米会長は「資金面の不足は、政治運動意識の低調と比例している」と、しみじみ述懐されたことが今現に。 分業は一体だれのためか。第一が大衆、第二が薬剤師と医師のためではないか。医師の認識不足は今更ここに言わぬ。 70年悲境に呻吟してきた薬剤師にとっては、今や暁光を見んとして最後の岩頭にたっているのではないか。 分業は薬剤師にとって社会的向上である。開局者もサラリーマンも共に起て。今一度、収入の幾割かを直に裂け。 三共 クロロマイセチン合成に成功 処方に出る薬品の数(九大薬局 松村久吉) 医薬分業は正論である以上、遠からず実施される事と思う。それにつき開局者の方々は、そろそろ対策に着手されても決して早過ぎるとは考えられない。その際、開局者各位の最も関心を持たれている事は、どんな薬品を準備すべきかという点であろうと想像する。病院の種類、診療科目、予算関係などで現在分業の形式を整えている病院でも、それぞれ相違はあろうが、その大綱はそう違うものではない。九大で現在調剤に使用されている薬品の数は案外少なく、局方品、新薬、製剤を合わせて300種足らずである。この300種の中には、1年に1回くらいしか処方されなおものもあって、案外処方薬品の数は少ないことを知っていただきたい。 ☆☆ 喫煙室 ☆☆25.4.1号 サムス准将は最初、高橋日医会長に2回目は2月27日日医臨時代議員会で「法的医薬分業に絶対反対」を決議して、副会長以下役員数名がこれを携えて准将と会談した時、約2時間に渡り准将は「医薬分業は大衆幸福のためのもっとも進歩した医療であり、しかも医師、薬剤師にとってもまた、もっとも合理的な方法である」と条理をたて諄々として解き、なお当日の反対決議は、日医代議員の誤れる考えの結実であるので、よく条理と趣旨を代議員に伝え、代議員はまた帰郷の上、各会員に趣旨徹底を計られたいと要望された。 しかるに日医は、医系新聞には准将の説示内容を掲載してくれるなと頼んでこれを伏せんとした事は、実にこっけいである。その翌28日の総会において、前日同様「分業絶対反対」を決議した事は、医師会がいかに頑冥度し難きかをうかがい知る事ができる。 この頑冥の因ってくる処は何処にあるか、これ全く薬を調剤して売る甘みを忘れることができぬからである。なぜその甘みをお忘れる事ができぬか、その原因は次の一言である。即ち、医師自ら調剤をしないからである。看護婦、女中に調剤せしめ、自ら手を下すことをせず、その利益のみを獲得するからである。 薬事法第22条によって、開業医の調剤投薬を徹底的に取締り、医師自らの調剤以外を絶対に黙過することがないならば、必ずや医師は、医薬分業がいかに医療合理化の結実であるかを悟るであろう。その時始めて、准将の説示が理解できるであろう。 ◆高野専務、呪われる 医薬分業問題に関して、医界より呪の的になっているのは高野専務である。「あ奴がいる間は、我々には枕を高こうして寝られぬ」とは、東大医学部教授の話しだそうだ。教養のあるべきグループのこの言や怨骨髄に徹しているものと思われる。薩摩ポーの意気、もって冥すべし。 ◆4.20 獅子身中の虫 分業は人にまかせて金儲けー薬剤師よ、決起せよ 先頃、愛知県の或る一支部68名が、医薬分業ならずんば薬剤師免許一括変換すべしとけ次したことが話題となっていたが、その後全県下に波及してすでに1000余名がこれに賛同、免許証は一括取りまとめられている。いよいよの時は、大挙上京、宮城前広場で焼却する手はずとなっているらしい。 福岡県薬局整備要領発表 薬事法による登録基準(調剤室2坪以上、その他)に適合しない薬局は、本年中に改修する様義務づけられていると同時に、医薬分業も考慮にいれた具体的整備基準を作成し発表した。 4.21 福岡県薬剤師大会(福岡市商工会議所 出席者約300名) 高野日薬専務理事を迎えて開催。高野専務2時間に亘り熱演し、内藤、長野、古賀氏他諸氏の熱血あふれる叫びに一同興奮した。白木理事によって宣言ならびに決議文が朗読され、割れるが如き拍手の中に可決した。 決議 : 本大会はあめりか薬剤師協会使節団の勧告ならびにサムス准将の指示に基づき、国民保健衛生の健全なる発展をはかるため、医学薬学の緊密なる協力により医薬分業の即時実施を期す。右決議す。 5.14 第3回福岡市薬剤師協会総会 福岡千代会館 出席者30名 会員総数200有余 5.26 第3回福岡県薬剤師協会代議員会(福岡商工会議所) 重点事業 6.1☆☆ 明珠 ☆☆ 日本の開業医は、収入の大部分を薬を売ることによって得ている。実に不合理なことであるが、医師も大衆も不合理なことと思っていないらしい。 多忙の医師は、まじめに患者の診断に没頭すれば、自己の診療所付設の不完全な薬室で、調剤にあたる時間は無いはずである。また、研究に要する時間も。 かかる医者が患者に与える薬は、医師としての診断に基づいた薬であるというよりも、自己薬室の棚にあるあり合わせの薬との場合もあろう。 以上は、衛生福祉部のH.G.ジョンソン大佐の講演要旨で、分業制の必要を真向より解き他面、開局薬剤師に対してもまた、しんらつに警告された。 医師の売薬行為以上に有害かつ危険なことは、薬剤師が患者を診断し処方することである。これは法律違反であり分業制を壊すものである。 民間放送実現 : 塩野義製薬では民間放送の第1日目第1声から、同社主力製品サンスター、ペンギン鳥の歌を初放送すると発表した。噂によると、民間放送の広告代は、1分間3000円を下らないらしい。 6.12 福岡県分業懇談会開催(福岡商工会議所) 後世悔いなく最後の猛運動展開 <決議> 1.医薬分業に関する法律案の今期国会提出を期し、会員中より100名の委員を挙げて大挙上京せしめ、あらゆる方面に対し建議陳情を行い、死力をつくして後世悔いなき猛運動を展開する。 7.7 県医師会との分業問題懇談会(18時 福岡市因幡町建設会館) 県医師会 : 渡邊会長、岡部、朔、坂本、鮎川、清原各理事 *昭和24年 国民所得1人当り アメリカ 660.000円 9.1 ☆☆ 論調 ☆☆ 両調査におけるサムス准将の説示が1時間に亘ってなされた結果が、第三者的委員の分業問題に対する考え方に微妙な変化を与えたことは見逃されないものがある。ともかく分業は実施すべきものであるとの観念がにわかに浮かび上がったようである。 従来、知識階級たる第三者にしても、分業問題は多少公衆保健衛生に関係はあろうが、主たる論点は、医師、薬剤師の業権問題で利害関係であると考えていたのであって、大衆の医療費負担が増加するや否やについては殆どわからず、ただ単に患者の便、不便が問題となっていたので、分業実施には難色を示す傾向があり、従って「時期尚早」という文字をややもすれば用いていたのである。 しかるに、今度の准将説示により、医師、薬剤師が各自独立した大学教育を受け、その修得した知識と技能によって、いわゆる技術分業をなすのであるということを聴収したわけである。よって、両調査会の帰趨は自ら明らかなものがある。薬剤師側としては、まことに意外な拾い物というべきであろう。 社会保障制度試案要綱の最終案の審議がこのほど小委員会で決定されたが、これにより薬局が医療機関中に含まれることを明確にしたことは結構なことであるが、今頃になって何だかおかしな感じも与える。 従来医療機関といえば、病院、診療所、歯科診療所を意味し、薬局は商的機関として除外されていたものであるが、このたびようやくその仲間入りしたわけである。当然法規的にも医療機関であるべき薬局が除外されていた、その基因するところは、薬事法22条の但書にあり、この但書こそ怨みは深しというところであろう。 ともかく社保小委員会が認めたことは、事小なれども分業制を認めんとするその黙示とも見られ、薬剤師としては括目すべきことで、よくその点を理解し、来るべき情勢に応じ己の使命を果たすようつくすべきで、速やかに薬局の外観、内容の整備と心構えを具現すべきである。大衆に対し、正しく医療機関であるとの実感を与えなければならない。 10.29 福岡市薬剤師協会主催 市薬業者懇親運動会(大名小学校) 競輪、子守競争、竹馬競争、長時間重量支え、自転車おそ乗り競争、綱引き等診奇な競技19種が東(博多)、西(福岡)対抗で行われた。 11.20 福岡市薬局整備状況 検査薬局数 103 / 基準適合 42 / 条件付適合 10 / 保留 51 12.1 診療報酬調査会(資料) 薬局の利益率 24% / 商品回転率 年5回 / 国民所得 1人当り 32.483円 / 医師所得 1人当り 251.472円 12.10 日薬発表(資料) 1薬局当り人口数 | |