福岡市急患診療 医薬品集

第 3 版

序    文

 我が国に於いては日本人の寿命が延び、成人病で大多数の人々が逝く時代となり、救命というドラマ性が薄くなっています。戦前のような病人らしい病人は減少し、医療というものが、治療に対する期待度が薄れています。

 然し急患診療の必要性は決して失われてはおりません。これに医療財源が枯渇してくると入院医療から在宅医療という方向へという考え方が先進国では高まっています。

 つまり狭義の治療から予防、公衆衛生活動へという発想が生じてきます。然し週休2日制の実施が普及し、実行するところが多くなって来ると、国民の生命を与る医療関係者も例外ではなく、日曜、祭日は勿論、週休2日制を実施して完全に休院するところが増大してきています。このた為に休日の急患診療の問題がが提起され、これが解決の必要が論議されるようになりました。

 救急患者は増大し、その内容も多様化して専門化が求められ、休日急患診療は医師個人の良心と熱意と努力だけでは解決出来ないところに来ています。福岡市民の休日の健康を守るため、休日急患診療体制をしくことを、福岡市と福岡市医師会は協議によって決定し、昭和49年5月より実施されてきました。

 1975年福岡市立休日急患センター医薬品集第1版を刊行し、休日急患診療に従事される医師、薬剤師のため役立ってきました。その後追補行いましたが、新薬も種々開発され、診療に必要な薬品も種類を増やし、更に追補せざるを得ないようになりました。之等の医薬品を追加収載して出動される医師の要請に答え、薬剤師の処方箋受け入れに体制整備を致すことになり、収載品目の改廃を行いました。

 本書の改定出版にあたって、協力して立派な医薬品集を編集された編集委員の方々に感謝申し上げると共に休日急患診療に出動される医師、薬剤師の好伴侶として活用されれば幸甚の至りに存じます。

     福岡市医師会 会長 阿部 輝明


第3版 改定にあたって

 このたび急患診療センター医薬品集第3版を発行することになった。この医薬品集は昭和50年5月に初版を発行して以来、本診療事業の薬物療法に便を計ってきたが、前回の第2版(昭和54年)発行以後の医薬品情報の整理と準備薬品の追加、さらに薬効再評価、添付文書の改訂などに対処するため、新診療センターの竣工をも記念して、内容を充実させて改訂を行うこととなった。

 第3版の特色は、収載医薬品を必要最小限に厳選したことである。すなわち銘柄選定は薬剤学的立場より厳正に行い、同種同効薬は原則として一品目にしぼった。一方、薬効別収載品目の選定に当たっては、使用頻度は少なくても、救急薬品として緊急に手許に必要なものを加えた。

 類書に見られない特徴としては、適応、使用上の注意、取扱い上の注意、作用等の項目を収載したことである。とくに添付文書のなかで必見すべき使用上の注意は本書ではタイトル化して直視的に把握できるようにし、副作用については内容がすぐに理解できるよう簡潔直截な表現を用いて配列した。また作用欄は薬剤の作用点・特徴を要約して便に供している。したがって医薬品解説書としての体裁を整えていることである。

 なお今回の編集委員会は所属病院でDrug informaition 業務経験を積んでいる福岡市薬剤師会勤務部会学術委員で構成した。

 この医薬品集が常時、医師の傍らにあって、診療に大いに活用されることを願うものである。


医薬品集

昭和59年4月1日発行

 発  行 社団法人 福岡市医師会

 編  集 社団法人 福岡市薬剤師会

編集委員

編集委員長 河野 義明(九州大学歯学部附属病院 薬剤部長)

副 委員長 吉本喜四郎(福岡市立第一病院 薬局長)

編集 委員 仲尾次広子(済生会福岡総合病院 副薬剤部長)

  々   飯野 常高(福岡赤十字病院 薬剤部調剤課長)

  々   森川 俊一(福岡大学病院 薬剤部主任)

  々   大野 澄子(国立福岡中央病院 薬剤科検査主任)

  々   野仲 範子(九大病院 薬剤部製剤掛長)

  々   比田勝悌子(三信会原病院 薬局長)

  々   吉川  学(九大病院 薬剤部調剤掛長)

  々   田中  悟(浜の町病院 薬剤部)

  々   馬谷 晶子(千早病院 薬局)

  々   西野 弘章(九州中央病院 薬剤部主任薬剤師)

  々   成沢 哲夫(福岡市立急患診療センター)